ペーパーカンパニーの作り方|違法性やメリット・デメリットを解説
ペーパーカンパニーと聞くとマイナスのイメージを連想しますが、すべてのペーパーカンパニーが「悪」というわけではありません。
ただし、作り方を間違えれば違法となり、摘発対象になるので注意が必要です。
この記事でわかること
・ペーパーカンパニーの作り方
・ペーパーカンパニーの違法性
・ペーパーカンパニーのメリットとデメリット
ペーパーカンパニーを作って節税したいとお考えの方は、ぜひ最後までご覧ください。
ペーパーカンパニーとは?
ペーパーカンパニーとは、書類上だけの会社のことです。
つまり、法人の設立登記はされているものの、事業活動の実態がない会社をさします。
ペーパーカンパニー自体は一般的な法人と同じなので、違法ではありません。
しかし、そもそも法人を設立する目的は事業活動をおこなうためであって、最初からなにもしない会社を作る行為は問題視されることがあります。
さらに、ペーパーカンパニー設立の目的が脱税や犯罪であれば、当然違法になるのはいうまでもありません。
ペーパーカンパニーの作り方
ペーパーカンパニーの作り方も通常の法人の手順と同様です。
法人を設立するためには、次の5つのステップがあります。
①会社の社名・所在地・事業目的・資本金・役員等の概要を決める
②法人用の実印を作成する
③定款を作成し、公証役場で認証を受ける
④資本金を払い込む
⑤登記申請書類を作成し、法務局で会社設立登記をする
法人登記の完了後、なにもしなければペーパーカンパニーとなります。
法人設立の手続きを専門家に任せることもできますが、違法性が疑われるペーパーカンパニーでは、依頼を拒否されてしまいます。
ペーパーカンパニーの設立目的には、十分注意しましょう。
ペーパーカンパニーの違法性を種類別に解説
ペーパーカンパニーはその設立目的によって、大きく分けて5つの種類があります。
①休眠会社
②ダミー会社
③反社会的組織の会社
④特別目的会社
⑤本業以外の事業がある会社
種類別に違法性を解説します。
①休眠会社
休眠会社とは、法人登記されているものの事実上放置されている会社のことです。
ただし事業活動の実態はなくても、正しく申告と納税をおこなっていれば問題になることはありません。
休眠中は次の3点に注意しましょう。
・必ず確定申告
(無申告が2期続くと青色申告を取り消されてしまう)
・税務署などに休眠の届出を提出
(法人住民税の節税にもなる)
・役員改選など登記手続き
(株式会社は最後の登記から12年間経ってしまうと、みなし解散(強制的な解散)の対象になる)
②ダミー会社
ダミー会社とは、詐欺などの犯罪組織が行動しやすくするために、隠れみのとして設立する会社のことです。
当然ながら悪質性が高く、違法と判断されることがあります。
特に、犯罪組織は支配する会社や経営者を表に出さないために、ペーパーカンパニーを利用することが多く、問題点として指摘されています。
このようなペーパーカンパニーは実態がわかりにくく、さまざまな会社や個人が複雑に関連しているのが特徴です。
③反社会的組織の会社
暴力団などの反社会的組織が表向きは健全であるように装うために、ペーパーカンパニーを設立することがあります。
ダミー会社同様、悪質性・違法性が高い会社です。
現在、反社会的組織は暴力団対策法や暴力団排除条例などで厳しく規制されており、さまざまな契約や社会活動を容易におこなうことができません。
その抜け穴としてペーパーカンパニーが利用されています。
特に、海外法人の場合は日本で登記などの情報を確認することが難しい場合があり、反社会的組織の会社かどうかを見分けるには、慎重に調査する必要があります。
④特別目的会社
特別目的会社とは、特定の金融取引や資産保有を目的とした事業をおこなうために設立される会社のことです。
ただし、脱税目的の事業であれば違法となります。
特別目的会社の代表的なものは、タックスヘイブンを利用するためのペーパーカンパニーです。
タックスヘイブンとは、法人税などの税率が著しく低いか税金が課税されない地域のことで、税金を回避するために利用されます。
なお、日本ではタックスヘイブン対策税制によって、タックスヘイブンにあるペーパーカンパニーの規制が厳しくなっています。
⑤本業以外の事業がある会社
本業以外に社会的にイメージの良くない事業を展開する場合、本業のイメージを守るために、登記上の別会社として、ペーパーカンパニーが利用されます。
実際は本業と一体で運営しているので、脱税行為とみなされるおそれがあります。
特に、悪質なのは虚偽の情報を表示するために作られる場合です。
たとえば、ネットショップなどは法律によって社名や電話番号を記載しなければなりません。
そのためにペーパーカンパニーを設立し、虚偽の情報を記載する悪質な事業者も存在します。
ペーパーカンパニーの3つのメリット
ペーパーカンパニーを作るおもなメリットを3つ紹介します。
①利益を分散させて節税できる
②交際費を経費計上して節税できる
③不動産売却損で利益を減らして節税できる
①利益を分散させて節税できる
会社の利益をペーパーカンパニーに分散させることで、法人税を少なくすることができます。
法人税は所得に税率23.2%をかけて計算する税金です。
ただし、資本金が1億円以下の中小法人は、所得のうち800万円以下については、税率15%が適用されます。
つまり、資本金1億円以下の複数の会社に利益を分散させれば、低い税率で税金を計算することができ、税負担を減らす効果があります。
②交際費を経費計上して節税できる
交際費をペーパーカンパニーに経費として計上することで、節税対策になります。
そもそも交際費は税法上経費(損金)として、認められていません。
しかし一定の範囲内であれば、交際費を損金にすることができます。
たとえば、資本金が1億円以下の中小法人の場合、年間800万円まで、または年間交際費のうち接待飲食費の50%までのどちらかを選択して損金にすることが可能です。
つまり交際費をペーパーカンパニーに計上すれば損金が増えるので、節税につながります。
③不動産売却損で利益を減らして節税できる
価値の下がった不動産をペーパーカンパニーに売却することで、節税するという方法があります。
たとえば、購入価格500万円だった土地の価値が下がったことで、300万円でペーパーカンパニーに売った場合、計上される土地売却損は200万円です。
すると決算で利益が300万円出ていたとしても、土地売却損を計上することで、利益は100万円になり、その分税金も少なくすることができます。
ペーパーカンパニーの3つのデメリット
ペーパーカンパニーを設立するとリスクになる、3つのデメリットを紹介します。
①脱税の疑いで税務調査が入りやすい
②法人住民税や登記費用など維持費がかかる
③タックスヘイブンの規制強化で節税にならない
①脱税の疑いで税務調査が入りやすい
ペーパーカンパニーの存在自体は、違法ではありません。
しかし、本来納めなければならない税金を不当に減らすために、ペーパーカンパニーを設立することは節税ではなく脱税となり違法です。
特に、本業と同じ事業でペーパーカンパニーを設立した場合、脱税を疑われて税務調査が入りやすくなります。
税務署はさまざまな情報から会社の動きを把握しており、不自然な取引があれば、詳しく調査し脱税を摘発します。
②法人住民税や登記費用など維持費がかかる
ペーパーカンパニーは事業実態がないだけで、通常の法人です。
地方自治体に納める法人住民税には、利益に課される税金以外にも、利益に関係なく資本金額や従業員数によって決められた税金を納税しなければならない均等割という税金があります。
そのためペーパーカンパニーであっても、均等割の支払いが発生し、年間最低でも道府県民税の約2万円、市町村民税の約5万円を負担しなければなりません。
③タックスヘイブンの規制強化で節税にならない
ペーパーカンパニーによるタックスヘイブンを利用した節税方法は、今後想定されるような効果を発揮できないおそれがあります。
日本におけるタックスヘイブン対策税制は、海外にあるペーパーカンパニー子会社の利益と日本の親会社の利益を合算して、日本で課税するという制度です。
タックスヘイブン対策税制はたびたび改正がおこなわれており、今後さらに規制が強化される可能性があります。
【まとめ】ペーパーカンパニー設立は税理士に相談!
ペーパーカンパニーそのものは違法ではないので、作ることは可能です。
しかし脱税や犯罪のため、設立することは違法になります。
節税であっても行き過ぎると脱税となってしまい、知識がないために知らず知らずのうちに脱税行為となっているかもしれません。
「ペーパーカンパニーを作りたいが違法ではないか不安だ」
「休眠会社の手続きを知りたい」
このようなお悩みをおもちの方は、ぜひタックスボイスへご相談ください。
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