【社宅家賃の計算方法は?】借り上げ住宅を活用すべき理由も教えます!
社宅は、会社や社員にとって、メリットのある制度です。
うまく活用できれば、会社の節税やPRにもつながります。
しかし、社宅家賃の金額は税務上取り扱いが決められており、間違えればペナルティを受けることもあります。
この記事でわかること
・社宅家賃の計算方法と具体例
・借り上げ住宅と社有社宅の違い
・借り上げ住宅を活用すべき理由
・社宅家賃の注意点
社宅制度の導入や借り上げ住宅の活用を検討されている方は、ぜひ最後までご覧ください。
社宅家賃を経費にするには?
社宅家賃は正しく計算すれば、経費として問題になりません。
国税庁は次のように説明しています。
使用人に対して社宅や寮などを貸与する場合には、使用人から1か月当たり一定額の家賃(以下「賃貸料相当額」といいます。)以上を受け取っていれば給与として課税されません。
役員に対して社宅を貸与する場合は、役員から1か月当たり一定額の家賃(以下「賃貸料相当額」といいます。)を受け取っていれば、給与として課税されません。
つまり、社宅家賃として適正な賃貸料相当額であれば、会社は社宅賃料と受取家賃の差額を経費計上でき、役員や従業員は給与課税されないということです。
次に詳しく解説します。
【原則】家賃の50%を経費にできる
社宅家賃は原則50%を経費にできます。
国税庁は従業員の社宅家賃について、次のように説明しています。
(2)使用人から賃貸料相当額より低い家賃を受け取っている場合
受け取っている家賃と賃貸料相当額との差額が、給与として課税されます。ただし、使用人から受け取っている家賃が、賃貸料相当額の50パーセント以上であれば、受け取っている家賃と賃貸料相当額との差額は、給与として課税されません。
また、役員であっても賃借物件の場合は、支払家賃の50%が賃貸料相当額の計算するときの基準です。
このように、会社の支払家賃のうち受取家賃を差し引いて経費となるのは、原則50%となります。
【特例】家賃の最大80〜90%を経費にできる
特例として、会社の支払家賃のうち、賃貸料相当額を個人から受け取っていれば、それ以外を法人の経費とすることができます。
賃貸料相当額は支払家賃の10〜20%になることが多いので、会社の支払家賃のうち受取家賃を差し引いて経費となるのは、最大80〜90%になります。
適正な賃料でなければ税金がかかる
社宅家賃を無償にしたり、賃貸料相当額よりも低い金額に設定したりした場合、会社が受け取った家賃と賃貸料相当額との差額が給与とみなされ、借りている個人に所得税が発生します。
また、会社が給与として処理するのを怠れば、会社にペナルティが課される場合があるので、社宅家賃の取り扱いには注意しましょう。
社宅家賃の計算方法と具体例
適正な賃貸料相当額を計算する方法は、小規模住宅と小規模住宅以外とで異なります。
次にそれぞれ具体的に解説します。
なお、床面積が240㎡を超えるものや、240㎡以下でも内外装などが豪華な社宅は、賃貸料相当額の利用は認められず、通常相場並みの家賃でなければなりません。
小規模住宅の場合
小規模住宅とは、以下に該当する住宅です。
・木造または軽量鉄骨プレハブ造の建物(法定耐用年数が30年以下)の場合、床面積132㎡以下
・重量鉄骨造または鉄筋コンクリート造の建物(法定耐用年数が30年を超える)の場合、床面積99㎡以下
小規模住宅の賃貸料相当額は、次の①から③までを合計して算出します。
①(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
②12円×{(その建物の総床面積㎡)}÷3.3㎡
③(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
賃貸料相当額=①+②+③
たとえば、会社が80,000円で借りているマンションを社員に社宅として貸した場合の経理処理を考えます。
まずは、賃貸料相当額を計算してみましょう。
・鉄筋コンクリート造のマンションで床面積は66㎡
・建物の固定資産税課税標準額は3,000,000円
・敷地の固定資産税課税標準額は1,000,000円
①3,000,000円×0.2%=6,000円
②12円×(66㎡÷3.3㎡)=240円
③1,000,000円×0.22%=2,200円
①+②+③=8,440円
よって、会社は社宅家賃として社員から8,440円受け取れば、給与認定されず問題となりません。
また、支払家賃と受取家賃の差額71,560円は会社の経費にすることができます。
小規模住宅以外の場合
小規模住宅以外とは、役員に貸す物件で床面積が小規模住宅よりも大きく240㎡以下に該当する住宅です。
小規模住宅以外の賃貸料相当額は、賃借物件か自社保有の物件なのかで計算方法が異なります。
〈賃借物件の場合〉
会社が家主に支払う家賃の50%の金額と、自社保有で算出した賃貸料相当額のいずれか大きい金額
〈自社保有の場合〉
①(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×12%
ただし、重量鉄骨造または鉄筋コンクリート造の建物の場合は12%ではなく10%
②(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6%
賃貸料相当額=(①+②)×1/12
たとえば、会社が200,000円で借りているマンションを役員に社宅として貸した場合の経理処理を考えます。
まずは、自社保有時の賃貸料相当額を計算してみましょう。
・鉄筋コンクリート造のマンションで床面積は120㎡
・建物の固定資産税課税標準額は6,000,000円
・敷地の固定資産税課税標準額は3,000,000円
①6,000,000円×10%=600,000円
②3,000,000円×6%=180,000円
自社保有時賃貸料相当額=(①+②)×1/12=65,000円
100,000円(支払家賃の50%)>65,000円(自社保有時賃貸料相当額)
よって、会社は社宅家賃として役員から100,000円受け取れば、給与認定されず問題となりません。
また、支払家賃と受取家賃の差額100,000円は会社の経費にすることができます。
借り上げ住宅とは?社有社宅との違い
借り上げ住宅とは、会社が不動産会社から借りた賃貸物件を、社員に貸し出す制度です。
会社は物件を借りるため、物件購入よりも初期投資が抑えられ、家賃を経費とすることができます。
ただし、空き部屋になったとしても物件を借りている限り、家賃を払い続けなければなりません。
一方、社有社宅とは、社員寮など会社が保有する物件を社員に貸し出す制度です。
物件購入後は自社の資産となり、減価償却費として毎年経費に計上することができます。
ただし、固定資産税や修繕費などの支出や物件管理は会社の業務になるので、会社の負担が大きくなります。
借り上げ住宅を活用すべき理由
会社が借り上げ住宅を活用すべき理由を4つ紹介します。
①住宅手当がないことで節税になる
②福利厚生としてPRできる
③社員の転勤をサポートできる
④物件の管理を不動産会社に任せられる
①住宅手当がないことで節税になる
社員に借り上げ住宅を貸すかわりに、住宅手当を支払わないことは、結果的に会社の節税につながります。
住宅手当とは、給与として所得税や社会保険料がかかる手当です。
このうち、会社は社会保険料の半分を負担しているので、社員の給与額が下がり社会保険料が下がれば、会社の負担も少なくなります。
②福利厚生としてPRできる
借り上げ住宅を採用している会社として、福利厚生面のPR効果が期待できます。
社宅は社員にとって相場よりも安い家賃で借りられることがメリットです。
そのうえ、借り上げ住宅は社員寮よりも物件を選ぶ自由度が高いので、福利厚生として活用されています。
③社員の転勤をサポートできる
借り上げ住宅は、条件に合う賃貸物件があれば、どこでも社宅とすることができるため、社員の転勤に柔軟に対応することができます。
社員は転勤が決まったら、まず転勤先の住宅を確保しなければなりません。
このような社員の負担を、会社が迅速に解決できるのが借り上げ住宅のメリットです。
④物件の管理を不動産会社に任せられる
借り上げ住宅の所有者は不動産会社なので、物件の管理も不動産会社に任せることができます。
修理や設備点検などの管理業務を自社でおこなうのは、本業に支障をきたすおそれがあります。
賃貸物件であれば管理業務は不動産会社に任せられるうえに、その際の修繕費や保守料なども、基本的に会社が負担することはありません。
社宅家賃の注意点まとめ
社宅の家賃を社員から受け取る際には、次の3つのポイントに注意しましょう。
①社宅家賃計算に必要な書類は必ず準備保管する
②居住用家賃は消費税がかからない
③水道光熱費、駐車場代、住宅手当は社宅家賃対象外
①社宅家賃計算に必要な書類は必ず準備保管する
社宅家賃の賃貸料相当額の計算に必要な書類を準備して、計算結果とあわせて必ず保管しましょう。
それらの書類が経費の証拠となるからです。
なお、賃貸料相当額の計算には、賃貸借契約書と固定資産税評価額等証明書が必要になります。
②居住用家賃は消費税がかからない
会社が支払う家賃と社員から受け取る家賃には、消費税がかかりません。
消費税法上、居住用の住宅貸付は非課税です。
経理処理の際には、支払い時も受け取り時もどちらも消費税非課税と処理できているか注意しましょう。
③水道光熱費、駐車場代、住宅手当は社宅家賃対象外
水道光熱費、駐車場代、住宅手当は社宅家賃対象外です。
水道光熱費や駐車場代は個人の生活費なので原則個人負担ですが、社宅家賃に含まれているときは社宅家賃として認められることがあります。
ただし、駐車場代は車の所有に関わらず割り当てられている場合に限ります。
【まとめ】社宅には借り上げ住宅を活用しよう
会社が社宅制度を採用するなら、借り上げ住宅を活用しましょう。
会社と社員にとって、節税効果や物件自由度の高さなどのメリットがあります。
しかし、メリットを十分に生かすためには、社宅家賃の金額設定に注意しなければなりません。
「税務上リスクの少ない社宅家賃はいくらなのか知りたい」
「どのような計算や書類が必要なのかサポートがほしい」
社宅家賃の設定にお悩みの方は、ぜひタックスボイスへご相談ください。
タックスボイスは提携する税理士を無料で紹介するサービスです。
賃貸料相当額の計算など社宅家賃の税務は専門知識が必要です。
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