【決算書を見せたくない】開示義務はある?提出を断るとアウトな2つの理由
金融機関や取引先から決算書の提出を求められることがあります。
しかし、内容が悪ければあまり見せたくないかもしれません。
ただ、決算書は会社の健康状態を外部に示す重要な書類です。
結論から言えば、会社の信用を守るためにも、求められた決算書は提出しましょう。
この記事でわかること
・決算書の開示義務
・決算書の提出を断るとアウトな2つの理由
・見せたくない決算書を提出するときの対処法
最後には提出するときの対処法を紹介しますので、決算書を見せたくないとお悩みの方はぜひご覧ください。
決算書には開示義務がある
決算書は決算公告といって、法律で決められた開示義務があります。
決算公告とは、会社法第440条1項に定められた手続きです。
第四百四十条(計算書類の公告)
株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない。引用元:e-Gov法令検索 会社法
つまり、原則すべての株式会社は、官報その他の方法により、広く決算書を開示しなければなりません。
また、会社法の別条文や税法、金融商品取引法でも、それぞれに開示義務を規定しています。
次に決算書の開示について、具体的に3つのケースを紹介します。
①すべての法人は税務署に開示する
②上場会社は一般に公告する
③株主や債権者の請求に応じて開示する
なお、会社法第440条1項の例外となる株式会社は、以下の会社です。
・有価証券報告書の提出義務のある会社
・インターネットのホームページにて計算書類の開示(電磁的公示)を行っている会社
・会社法上の特例有限会社
すべての法人は税務署に開示する
税法において、会社規模の大きさにかかわらず、営利活動をおこなうすべての法人は、税務署への決算書の開示が義務づけられています。
この開示手続きがいわゆる確定申告です。
確定申告では、決算書と決算書をもとに税金を計算した申告書を提出します。
税務署へ開示する決算書はおもに次の4つです。
・貸借対照表
・損益計算書
・株主資本等変動計算書
・個別注記表
税務署は提出されたこれらの決算書や申告書の内容を確認して、会社が正しく税金を計算し納税しているかを検査しています。
上場会社は一般に公告する
金融商品取引法では、投資家保護と適正な投資情報の提供のために、上場企業などに対して決算書を広く一般に開示することを義務づけています。
また、金融庁へも提出する必要があります。
金融商品取引法が開示を求めている書類は、おもに次の6つです。
・貸借対照表
・損益計算書
・株主資本等変動計算書
・個別注記表
・キャッシュフロー計算書
・有価証券報告書
その他にも会社の業績をあらわす書類として、決算短信や四半期報告書も開示されています。
株主や債権者の請求に応じて開示する
株主や債権者から請求されたときは、会社の営業時間内はいつでも、法定の書類保存期間内(5年間)の決算書を開示しなければなりません。
これは会社法442条3項に規定されています。
第四百四十二条(計算書類等の備置き及び閲覧等)
3 株主及び債権者は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。ただし、第二号又は第四号に掲げる請求をするには、当該株式会社の定めた費用を支払わなければならない。
一 計算書類等が書面をもって作成されているときは、当該書面又は当該書面の写しの閲覧の請求
二 前号の書面の謄本又は抄本の交付の請求
三 計算書類等が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧の請求
四 前号の電磁的記録に記録された事項を電磁的方法であって株式会社の定めたものにより提供することの請求又はその事項を記載した書面の交付の請求引用元:e-Gov法令検索 会社法
株主や債権者の閲覧請求が認められている書類は、次の6つです。
・貸借対照表
・損益計算書
・株主資本等変動計算書
・個別注記表
・事業報告書
・附属明細書
また、謄本や抄本の交付請求も認められています。
なお、会社は正当な理由なく閲覧および交付請求を拒否することはできません。
請求に応じない場合には、ペナルティが発生することがあります。
任意でも提出を断るとアウトな2つの理由
決算書を見せたくない場合、任意の提出だと断りたくなるかもしれません。
しかし、任意であっても断ると会社にとって大きな損害となってしまうケースがあります。
特に、提出を断るべきではない理由を2つ紹介します。
①金融機関に対して融資を受けられなくなる
②取引先に対して取引ができなくなる
金融機関に対して融資を受けられなくなる
金融機関に対して、決算書の提出を断ると、融資が受けられなくなる可能性があります。
金融機関は会社の決算書から読み取れる情報を精査して、融資の実行を判断をします。
決算書にはその会社の事業規模や安全性、返済能力の有無、将来性など多くの情報が集約されているからです。
よって、金融機関は決算書を確認できないかぎり、融資の手続きを進めることができません。
金融機関との良好な関係づくりのためにも、決算書を求められたときは提出しましょう。
取引先に対して取引ができなくなる
取引先に対して、決算書の提出を断ると、取引ができなくなる可能性があります。
取引先が決算書の提出を求める理由はおもに次の2つです。
・新規取引の場合は、会社の安全性の確認
・既存取引の場合は、会社に重大な変化がないことの確認
つまり、取引先として信用できるかどうかをチェックするために、決算書が必要になります。
よって、決算書の提出を断れば「業績などが知られると都合が悪いのではないか」と判断され、信用をなくすおそれがあります。
取引はお互いの信用によって成り立つことを意識しましょう。
見せたくない決算書を提出するときの対処法
見せたくない決算書でも提出するほうがいい理由を説明しましたが、決算書の内容が悪ければそのまま提出すべきではありません。
会社の印象が悪くなるおそれがあるからです。
そこで、内容を変えられない決算書のかわりに、会社の信用を守るための補足の情報を取引先に渡しましょう。
見せたくない決算書を提出するときの、具体的な対処法を2つ紹介します。
①数字が悪い理由を説明する
②事業計画や予測を説明する
①数字が悪い理由を説明する
決算書の数字が悪い理由を具体的に説明しましょう。
日々の営業や経営管理の結果が業績として決算書にまとめられますが、その業務すべてを数字であらわすことはできません。
たとえば、利益が赤字であったとしても、その赤字は回復見込みがあるのか、それとも会社として危険な状態なのかという具体的な状況は、提出された決算書だけでは判断できません。
そこで、提出先に数字が悪い原因と今後の対策を説明することで、単なる赤字決算ではないということを納得してもらえれば、信用を保つことができます。
具体的な例として、赤字決算の原因が売上の減少であった場合、一時的なものなのか継続して減少するのかで印象が大きく違います。
一時的なものなのであれば、今後の回復見込みを伝えることが重要です。
一方、得意先がなくなったなど売上減少が続くような要因があれば、新たな販路の開拓や、新商品の開発、販売単価の見直しなど、売上回復に向けて具体的な対策を講じていることを説明しましょう。
②事業計画や予測を説明する
決算書とあわせて、具体的な事業計画や予測を提出しましょう。
その際には赤字決算の改善策を文章で説明するだけでなく、数字でも具体的に示すほうが説得力があります。
たとえば、赤字決算の対策として
「利益率を上げるために、販売単価を上げて、さらに仕入先開拓により売上原価削減も目指します」
という説明よりも
「販売単価を3%上げて、さらに仕入先開拓により売上原価を5%下げることで、利益率が10%上がるので赤字が改善する見込みです」
と具体的に説明すると、今後の会社に対しての印象が変わります。
相手が会社の将来に期待できるような説明をすることが重要です。
ただし、会社を良く見せたいからといって、実行不可能な計画をたてることは絶対にやめましょう。
事業計画を信じて取引を続けた取引先が、計画は口先だけだったと失望して、結果的に信用を失うことにつながってしまいます。
【まとめ】決算書は任意でも提出するべき
見せたくない決算書でも、求めに応じて提出することをおすすめします。
提出を拒否すること自体が、会社の信用を低下させてしまうからです。
決算書の内容が悪くて見せたくないのであれば、会社の将来に期待してもらえるような対策をおこないましょう。
「決算書の提出を求められたが、内容が悪いので対応をアドバイスしてほしい」
「取引先を納得させられる事業計画策定をサポートしてほしい」
決算書の提出にお悩みの方は、ぜひタックスボイスにご相談ください。
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