税務調査で経費が否認されるとどうなる?指摘されないための対処法
税務調査で経費が否認されると、いくつかの手続きと追加の納税が必要になります。
しかし、事前の対処を徹底していれば、税務調査で経費を否認されづらいでしょう。
この記事でわかること
・税務調査で経費が否認されたときの申告と税金
・税務調査で経費が否認されるケース
・税務調査で指摘されないための対処法
経費の否認金額によっては、納税が多くなるケースもあります。
余計な税金をとられないためにも、ぜひ最後までご覧ください。
税務調査で経費が否認されるとどうなる?
税務調査の結果、経費が認められず経費から除外するよう指摘されることがあります。
これを「否認」といいます。
税務調査で経費が否認されるとどうなるのかを、確認しておきましょう。
修正申告の作成と提出
経費が否認されると、その分提出した申告書よりも利益が増えることになります。
よって、確定申告のやり直し、いわゆる修正申告を作成し、税務署へ提出しなければなりません。
なお、修正申告書を作成するときは、通常の確定申告よりもさらに専門的な知識が必要となります。
税金の納付
経費が否認されたことで、正しく計算し直した利益にも税金が課されます。
つまり、追加で税金を納付する必要があります。
また、他にもペナルティとしての税金も納付しなくてはなりません。
具体的な税金の種類は、次に詳しく解説します。
税務調査で経費が否認されたときに納付する税金
税務調査で経費が否認されたときに発生する税金は4つです。
①本税
②過少申告加算税
③延滞税
④重加算税
①本税
本税とは、修正申告で計算された所得に対して課される税金です。
修正申告では、正しい税金を計算し直し、すでに支払った金額を差し引いた残りの未納付分を納めます。
税率は法人税であれば原則23.20%ですが、その会社の形態や所得金額によって異なる税率が適用されます。
なお、本税は修正申告を作成し提出するのと同時に納付しなければなりません。
②過少申告加算税
過少申告加算税とは、確定申告の申告納税額が実際より少ない場合に課税されるペナルティとしての加算税です。
これはあくまで、ミスによる税額の計算間違いや見解の違いがあったときに課されます。
なお、計算方法は①で解説した本税の10%です。
ただし、本税の金額が50万円または当初に申告した税金のうち、大きい方の金額を超える部分には15%の税率が適用されます。
③延滞税
延滞税とは、納税が期限より遅れた場合のペナルティとしての税金で、本税に税率をかけて計算される利息のようなものです。
税率は納期限の翌日から2か月を経過する日までの期間は原則年7.3%、それ以後の期間になれば年14.6%になります。
なお、延滞税は税金の納期限の翌日からすべて納付されるまでの日数で計算されますが、本税が1万円未満の場合には発生しません。
④重加算税(悪質なケース)
重加算税とは、 悪質な行為があった場合に課される重いペナルティです。本税に35%の税率をかけて計算されます。
しかし、経費が否認されたからといってすぐに課税されるものではなく、悪質と判断された場合にのみ課税されます。
なお、重加算税が適用される場合には、過少申告加算税は課税されません。
悪質な行為とは、隠ぺいや仮装経理が見つかった場合や、税務調査で意図的に不都合な書類を隠したりウソをついたりした場合です。
税務調査で経費が否認される4つのケース
税務調査で経費が否認されるケースはおもに4つあります。
否認されないためにも、注意すべきこととしてチェックしておきましょう。
①法令や要件を満たしていない
②損金算入の時期を誤っている
③同族会社の行為計算の否認規定に該当する
④架空の経費を計上している
【ケース①】法令や要件を満たしていない
法人税を計算するうえで、支出した金額すべてが経費に計上できるわけではありません。
法令で認めていない経費や要件を満たしていない経費を計上していると、税務調査で否認されます。
たとえば、役員報酬は毎月同じ金額の給与にすれば経費にすることができる、などです。
【ケース②】損金算入の時期を誤っている
販売費、一般管理費その他の費用のうち、減価償却費以外の費用は、その事業年度終了の日までに債務が確定していれば経費計上できます。
「債務が確定しているもの」を、国税庁が定義しているのは以下のとおりです。
この償却費以外の費用でその事業年度終了の日までに債務が確定しているものとは、別に定めるものを除き、次に掲げる要件のすべてに該当するものをいいます。
1 その事業年度終了の日までにその費用に係る債務が成立していること。
2 その事業年度終了の日までにその債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。
3 その事業年度終了の日までにその金額を合理的に算定することができるものであること。
よって、3要件のいずれかが該当しない経費は、税務調査で否認されてしまいます。
【ケース③】同族会社の行為計算の否認規定に該当する
同族会社の行為計算の否認規定とは、法人税法第132条に定められています。
同族会社の行為や計算が、法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがある場合、その行為や経費は否認されるというものです。
一般的な節税対策のすべてがこの規定に該当するわけではありませんが、否認される制度があることは認識しておきましょう。
【ケース④】架空の経費を計上している
法律に違反した架空の経費を計上するような行為は脱税であり、税務調査で摘発されます。
架空の経費を計上することは、即刻悪質だと判断され重加算税が課されます。
そのうえ、青色申告の取り消しなど、重いペナルティを受けることになるので、絶対にしてはいけない行為です。
税務調査で経費を指摘されないための対処法6つ
法律に規定されている範囲での経費であれば、税務調査で指摘されることはありません。
税務調査で経費を否認されないための対処法を6つ紹介します。
①役員報酬は定期同額給与が原則
②経費は根拠書類をもとに処理する
③法人経費に個人的な支出を混ぜない
④議事録・契約書・規程を整備する
⑤同族取引は特に注意する
⑥決算までに税理士に相談する
【対処法①】役員報酬は定期同額給与が原則
役員報酬を経費とするには、定期同額給与が原則です。
万が一、役員報酬を変動させてしまうと経費として認められなくなります。
定期同額給与とは、事業年度の各支給時期における支給額が同額であるということです。
変更する場合は、事業年度開始の日から3か月を経過する日までに改定しなければなりません。
【対処法②】経費は根拠書類をもとに処理する
経費を計上するときは、その根拠となる書類をもとに処理することが重要です。
根拠となる書類とは、領収書や請求書など取引の内容が正確にわかるものです。
たとえば、飲食費を経費とするためには領収書に参加者の人数や関係性といった情報が経費の根拠となります。
そのため、領収書に記載のない情報はメモを残すなど対策する必要があります。
【対処法③】法人経費に個人的な支出を混ぜない
法人の経費で否認事項の論点になりやすいのが、法人と個人の線引きです。
個人的な支出を法人の経費として計上した場合、経費計上は否認され、場合によって個人の給与として個人が課税されることがあります。
法人の経費には、個人的な支出を混ぜないように注意しましょう。
【対処法④】議事録・契約書・規程を整備する
税務調査では、領収書や帳簿などと合わせて、議事録・契約書・規程なども確認することで、事実関係のチェックと税務処理の正当性が判断されます。
口頭での質疑応答では、さまざまな質問に答えているうちに、つじつまの合わない説明をしてしまうおそれがあります。
正確な説明のためには、書面の整備が必要不可欠です。
【対処法⑤】同族取引は特に注意する
会社と役員、会社と関連会社の取引は、税務調査で特に重点的に調べられます。
同族会社は独立した会社と比べて、不自然な取引をしている場合が多いため、経費を否認しやすいからです。
たとえ同族間であっても、正当な価格で正当なお金の受け渡しをするよう注意しましょう。
【対処法⑥】決算までに税理士に相談する
経費を否認されない1番の対処法は、専門家である税理士に相談することです。
法令や要件などはとても複雑で理解しにくいものもあります。
また、経費にするための書類の準備なども税理士に相談することで抜け漏れを防ぐことができます。
税理士には決算までに相談しましょう。
なぜなら、決算が確定してしまうとその決算の内容を変更することは困難で、税理士であっても対処できない場合があるからです。
【まとめ】税務調査で否認されないために事前に対処しておこう!
税務調査で経費が否認されるとペナルティがあります。
ペナルティを回避するために、事前に対処しておきましょう。
「税務調査で経費を否認されないためにどうすればいい?」
「経費にするための書類はこれで合っているのだろうか?」
このようなことでお困りの方は、タックスボイスを利用されてはいかがでしょうか。
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