税務調査でクレジットカード明細は経費の証明になるのか解説します!
クレジットカードは事業でも使い勝手が良いものです。
しかし、税務調査がきたときに、クレジットカード明細を経費の証明にできるのかという問題は、税法によって考え方が異なります。
それぞれの税法による要件が満たされていないと、税金を多く支払わなければいけないこともあります。
この記事でわかること
・税務調査の概要
・税法別クレジットカード明細の取り扱い
・クレジットカード明細を経費の証明にするための注意点
クレジットカード明細で経費計上するための方法を解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
クレジットカード(クレカ)明細は経費の証明になる?
クレジットカードの明細書は、税務調査で経費を証明する書類になる場合とならない場合があります。
税務調査ではどのような帳簿書類が必要なのかを理解するために、まずは税務調査についておさらいしましょう。
(おさらい)税務調査とは?
税務調査とは、国税局や税務署が納税者の申告内容が正しいかどうかを確認するためにおこなう調査です。
税務調査には、強制調査と任意調査があります。
強制調査とは、脱税などの不正行為が疑われる納税者を対象とした調査です。
一方、任意調査とは、疑いのない普通の納税者を対象におこなわれます。
一般的に税務署から事前に通知がある調査は、この任意調査です。
任意調査の一般的な流れは、事前通知のあと実地調査がおこなわれ、調査官による調査結果の報告があります。
結果によって修正すべき点があれば、修正申告と追徴課税の納付が必要となります。
税務調査で確認される帳簿書類とは?
税務調査では調査官が実際に納税者の帳簿書類を確認します。
確認される帳簿書類は、おもに次のようなものです。
・総勘定元帳、仕訳帳などの帳簿類
・帳簿作成の元となる資料(領収書、請求書など)
・納品書
・契約書
・稟議書
・議事録 など
調査官は総勘定元帳とその根拠となる領収書なども必ずチェックします。
たとえば、架空の領収書を作成していたり、経費の要件を満たさない領収書で処理していたりした場合、総勘定元帳の記載だけでは不正行為を発見できないからです。
よって、調査官の質問によどみなく答えられるように、領収書などの根拠となる資料を正確に保管しておく必要があります。
税法によって経費の証明方法が違う
経費の証明方法は、税金の種類によって異なります。
税法に規定する経費の要件が、それぞれ違うからです。
次に所得税、法人税、消費税について、経費の証明方法を解説します。
【所得税】クレカ明細は経費の証明になる
所得税において、クレジットカード明細は経費(必要経費といいます)の証明になります。
なぜなら、所得税法には、必要経費となる金額の要件は定められていますが、領収書などの保管要件は明記されていないからです。
所得税法で規定されている必要経費は、次の要件を満たす金額です。
①総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
②その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額
また、確定申告をする年の必要経費にできる金額は、その年において債務の確定した金額や減価償却費などと規定されています。
「その年において債務が確定した金額」とは、次の3つの要件をすべて満たす必要があります。
①その年の12月31日までに債務が成立していること
②その年の12月31日までにその債務に基づいて具体的な給付すべき原因となる事実が発生していること
③その年の12月31日までに金額が合理的に算定できること
参考:国税庁 やさしい必要経費の知識
国税庁 やさしい必要経費の知識
つまり、クレジットカード明細に記載のある内容が、上記の要件を満たしていれば、必要経費として認められるので、クレジットカード明細は経費の証明となるのです。
ただし、クレジットカード明細の記載内容では、何を購入したのかわからない場合は、必要経費として認めてもらうことは難しくなります。
事業に直接必要な経費であると説明できるように、必要経費の内容をメモしておきましょう。
【法人税】クレカ明細は経費の証明になる
法人税においても、クレジットカード明細は経費(損金といいます)の証明になります。
法人税法でも、損金となる金額の要件の定めはありますが、領収書などの保管義務は明記されていないからです。
法人税法で規定されている損金は、別段の定めのあるものを除き、次の金額とされています。
①売上原価等の額
②販売費、一般管理費その他の費用の額
③損失の額
このうち、販売費、一般管理費その他の費用の額は、事業年度終了の日までに債務が確定しているものや償却費に限られます。
「事業年度終了の日までに債務が確定しているもの」とは、次の3つの要件をすべて満たす場合です。
①その事業年度終了の日までにその費用に係る債務が成立していること
②その事業年度終了の日までにその債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること
③その事業年度終了の日までにその金額を合理的に算定することができるものであること
参考:国税庁 販売費、一般管理費その他の費用における債務確定の判定
国税庁 販売費、一般管理費その他の費用における債務確定の判定
つまり、クレジットカード明細に記載のある内容が、上記の要件を満たしていれば、損金として認められるので、クレジットカード明細は経費の証明となるのです。
ただし、所得税同様、クレジットカード明細の記載内容では、何を購入したのかわからない場合、損金として認めてもらうことは難しくなります。
調査官に説明できるように、損金とした経費の内容をメモしておきましょう。
【消費税】クレカ明細は経費の証明に原則ならない
消費税においての経費は、仕入税額控除の要件として明記されています。
クレジットカード明細はその要件に該当しないと、国税庁のホームページに公表されているので、領収書など要件に該当するものがなければ、クレジットカード明細では原則経費にはできません。
ちなみに、仕入税額控除とは、消費税の計算上、売上の消費税から控除できる消費税のことです。
仕入税額控除として認められないということは、経費として支払った金額に消費税が含まれていたとしても、消費税の計算には入れることができません。
仕入税額控除のための領収書には、次の5つの項目の記載が要件となっています。
①発行元(書類の作成者の氏名または名称)
②年月日(課税資産の譲渡等を行った年月日)
③商品やサービスの内容(課税資産の譲渡等に係る資産または役務の内容)
④金額(税率の異なるごとに区分して合計した課税資産の譲渡等の対価の額)
⑤宛名(その書類の交付を受ける者の氏名または名称)
参考:国税庁 カード会社からの請求明細書
国税庁 カード会社からの請求明細書
クレジットカード明細は、商品やサービスを提供した事業者ではなく、クレジットカード会社が発行するものなので、発行元を記載するという要件に該当しません。
よって、クレジットカード明細は経費の証明にはなりません。
ただし、上記の5項目がクレジットカード明細に記載されていれば、仕入税額控除の要件に該当し、経費の証明とすることができます。
クレカ明細を経費の証明にするための注意点
税務調査でクレジットカード明細を根拠書類とするためには、注意点があります。
調査官に指摘されないように、抜け漏れがないか確認しておきましょう。
記載内容をチェックする
クレジットカード明細に記載されている内容をチェックしておきましょう。
特に、仕入税額控除の要件に該当する内容かどうかは注意が必要です。
また、事業に直接かかわる経費だけが記載されているかも確認してください。
個人の支出を事業用のクレジットカードで支払ってしまった場合には、経費に含めないように処理しなければなりません。
WEBの明細書はダウンロードしておく
クレジットカードのオンライン明細やデジタル領収書など、WEBの明細書はダウンロードしておきましょう。
保存期限を過ぎると消えてしまうことがあるので、注意が必要です。
万が一、 期限が切れてWEB上で見られなくなってしまうと、経費の根拠資料にすることができません。
その際には、再発行が可能かWEB明細の発行元に確認しましょう。
発生主義で帳簿をつける
クレジットカード明細は発生主義で帳簿をつけましょう。
経費は商品を購入したときに計上するのが原則であり、クレジットカードの支払いは後払いとなるため、経費計上の時期に注意が必要です。
購入日に「未払金」として処理し、クレジットカードの支払い時に、未払金の消し込みをおこないます。
領収書やクレカの売上票も保存しておく
クレジットカードで支払ったときに、領収書やクレジットカード売上票も受け取った場合はそれらも保存しておきましょう。
クレジットカード明細では、経費の要件を満たさない場合があるので注意が必要です。
領収書やクレジットカード売上票は、仕入税額控除の要件を満たす内容が記載されているので、クレジットカード明細と合わせて保存しておくと安心です。
参考:クレジットカード売上票
東京VISAカード 売上票イメージ
【まとめ】クレカ明細を経費の証明にするのは注意!
クレジットカード明細を経費の証明にできるかどうかは、税法によって要件が異なります。
万が一、経費の要件を満たしていないと、税務調査で認められず、追徴課税が発生することもあります。
「手元の資料で経費にできるのか心配」
「税法の要件が複雑でよくわからない」
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