【事前確定届出給与とは?】社長のボーナスを全額経費にできる方法!
今回は事前確定届出給与についてお話ししたいと思います。
この記事を読むことによって下のような疑問が解消されると思います。
●事前確定届出給与って聞いたことあるけど、どんなものなの?
●事前確定届出給与を使うと、なんで社会保険が安くなるの?
●事前確定届出給与で、税金は安くできるの?
主にこの3つです。
最近では、少しずつ認知されるようになりましたが、今でも事前確定届出給与に、はてなマークが付く方も多いと思います。
記事の前半部分は「事前確定届出給与とはなんぞや?」ということ。
次に「事前確定届出給与についての注意点やメリットについて」
記事の後半部分では、「事前確定届出給与を提案しない税理士がいる理由」
「会社のことを考え、節税アドバイスができる税理士と付き合いましょう」という構成になっています。
それでは説明していきたいと思います。
【はじめに】なんで社長の給与は毎月同じ金額なのか?
はじめに、なんで社長の給料は同じ金額なのでしょうか。
それは、会社の利益を社長の給料で自由にコントロールさせないようにするため、です。
こういう利益操作を社長がしてしまったら、法人税を支払う会社はほとんどなくなってしまいます。
それでは税務署側も困ってしまうのです。
そのため、利益の増減を見て、給料を上げ下げしないように、毎月同じ額を社長には支払うようにと決められています。 (これは定期同額給与という税務上のルールです)
しかし前もって届出をしていれば、社長にもボーナスを払っていいですよという制度があります。
これを次に説明します、事前確定届出給与といいます。
【事前確定届出給与とは?】
事前確定届出給与を詳しく見ていきましょう。
この制度には3つのルールがあります。
①賞与(ボーナス)の支払い金額を決めておくこと
②賞与(ボーナス)の支払う時期を決めておくこと
③この2つの決めごとを税務署に前もって届け出ること
この3つです。
この3つさえしておけば、通常、経費扱いにならない社長のボーナスが損金(経費)として扱うことができるようになります。
では2つの決めごとを税務署に届出をするのはいつなのか?
法人は株主総会で、金額と時期を決定しますが、届出をする期限は以下のように決められています。
●株主総会の決議日から1ヶ月以内に届出を税務署に提出する。
●事業年度開始から4ヶ月以内(設立した初年度は2ヶ月以内)に届出を税務署に提出する。
この2つのいずれか早い日に提出する必要があります。
下の図にまとめておきます。
【事前確定届出給与の注意点!】もし事前どおりに支給しなかった場合は?
もしきちんと事前の届出のとおりに金額と時期を支給しなかった場合はどうなるでしょうか。
簡単に言えば、「経費として認められない」ことになります。
ちなみに1円でも、1日でもずれたらダメです。
そのため、ずっと金額と支給する日を忘れずに頭に置いておかなければなりません。
事前確定届出給与の3つのメリットとは?
事前確定届出給与の3つのメリットをまとめておきます。
●節税対策になる
●社長のモチベーションアップになる
●社会保険料を減らすことができる
それでは一つ一つみていきましょう。
節税対策になる
①期のスタートから利益が大きく出ることがわかる
②業種上、毎年利益が大きくでる
特にIT関係や、建設業は、年によって利益が大きく出ることも多いでしょう。
事前確定届出給与で賞与(ボーナス)を設定しておけば、決算間際になって節税対策をする必要もなくなります。
社長のモチベーションアップになる
利益をきちんと出して、賞与をもらう。
決まった賞与があれば、それに向けて社長のモチベーションも上がっていくでしょう。
利益目標を達成しなければ赤字になってしまう。
ハードルの高い賞与を設定することで、「仕事を頑張る材料」にしている方もいます。
一人社長で、自分で事業をされている方にとっては、よりいいかもしれません。
一人で事業をしていれば、自己管理がむずかしい為、達成したい目標を設定するのに事前確定届出給与はいい方法になります。
社会保険料を減らすことができる
支払う年間の給与額が同じでも、事前確定届出給与でボーナスとして支払えば、社会保険料を減らすことができます。
それは賞与(ボーナス)の社会保険には月給とは異なり、上限が決まっているからです。
それは、
健康保険は年間573万円を上限として計算
厚生年金は月間150万円を上限として計算
この上限を超えた事前確定届出給与を支払えば、超えたぶんに関しては社会保険料はかからないという仕組みです。
そのため社会保険を少しでも減らしたい人は、月々の報酬をぐっと減らして、賞与でそのぶんを賄うというスキームがあります。
ものすごく極端な例をあげてみます。
下の例をみてください。
【年収1500万】 月125万×12ヶ月
【年収1500万】 月10万×12ヶ月 事前確定届出給与のボーナス1380万
ふたつの総支給は同じですが、社会保険の削減という面では賞与の上限が決められているため、安くすることは可能です。
しかし注意が必要です。
このスキームを使って、月給を極端に安くして、多く賞与で支払うやり方に、歯止めをかけるため、通達がなされました。
通達によれば、手続き上は問題がないにしても、賞与とすることで、社会保険の負担が少ないにも関わらず、月額の給与を分割支給している場合は、給与としてきちんと社会保険を計算してくださいねということです。
また月給をものすごく安く設定していれば、「この社長は、ちゃんと生活をしていけているのか?」と税務署から目をつけられることもあるでしょう。
あまり極端なことをやって、他の税金を取られてしまっては元も子もありませんので、きちんと税理士の判断を仰ぐことをオススメします。
【事前確定届出給与】税理士も手間なので、提案しない人も多い。理由は3つ!
今回の記事で事前確定給与とはなんなのか?注意点やメリットもわかりました。
通常、税理士から提案するものですが、このスキーム自体提案せず、嫌う税理士も多いのが事実です。
その理由は3点です。
①金額と時期を間違ってはいけないため、アナウンスし忘れのリスクが高い
②イレギュラーな方法なため、そもそも事前確定届出給与のスキームを嫌う
③そもそも事前確定届出給与のメリットがある会社が限られる
①金額と時期を間違ってはいけないため、アナウンスし忘れのリスクが高い!
確かにメリットの大きい対策ですが、税理士側の負担も大きいものになります。
税理士も100社200社担当していれば、すべての会社にこのスキームを提案して、管理することが難しいということです。
さらに所長ではなく、担当者に任せていたら?
所長の目が届かないところが大きく、顧問先にアナウンスし忘れしまい、損金計上できず、社長のクレームを誘うリスクを同時に抱えてしまうことになります。
つまり最初から提案をしない税理士が多いことも事実です。
②イレギュラーな方法なため、そもそも事前確定届出給与のスキームを嫌う
このスキーム自体が、偏りのある方法の為、正攻法をよしとする税理士にはあまりフィットしません。
将来会社に何が起きるかわかりません。
業績が下振れた時に、事前確定給与の支払いが大きすぎると、決算が赤字になってしまうことも考えられます。
●金融機関から借り入れができなくなった
●取引先から赤字の会社とは付き合えないと仕事を断られた
黒字を前提とした将来の予想できないスキームには、提案する税理士もあまり多くないということです。
③そもそも事前確定届出給与のメリットがある会社が限られる
●社長の個人蓄えが多い
●赤字になっても会社的に問題がない
●社長に賞与を出せるくらい会社が潤っている
このように3つの条件が当てはまる会社が少ないことも理由でしょう。
【まとめ】きちんと節税対策ができる税理士と付き合う!
今回は事前確定届出給与についてお話ししました。
事前確定届出給与は社長の賞与(ボーナス)が全額経費にでき、メリットのある制度です。
しかし事前確定届出給与を提案しない税理士もいることもわかりました。
それは前述した通りです。
スキームが御社に合うのか、身のある節税対策の一つとして、税理士がアドバイスすらしてくれなければ、意味がありません。
今回の事前確定届出給与は節税対策の一つの方法ですが、
●うちの税理士は全く提案をしてくれない
●節税アドバイスすらない
このように不満を持つ社長がまだまだいらっしゃいます。
ぜひ税理士探しにお困りでしたらご相談ください。