個人事業主が従業員を雇った場合の所得税は?注意点を詳しく解説!
給与の所得税といえば、給与から勝手に天引きされているものだという認識でしょう。
しかし、事業主の立場からみた所得税は、必要な手続きがいくつもあるうえに、従業員の給与手取り額に影響するので、間違えられないという大きなプレッシャーを感じることもあるでしょう。
そのため従業員を雇った場合の所得税の手続きや納付方法などをよく理解しておかなければなりません。
〜この記事でわかること〜
・個人事業主が従業員を雇ったときの手続き
・従業員の所得税注意すべき3つのタイミング
・従業員を雇ったときの所得税の注意点
従業員の所得税の注意点を詳しく解説しながら、社会保険料についても触れていきます。
この記事を読めば給与事務の基本がわかるでしょう。
ぜひ最後までご覧ください。
個人事業主が従業員を雇ったときの手続き
従業員を初めて雇ったときは、いくつかの手続きが必要になります。
もしも各機関への手続きをせずに給与を支払ってしまうと、事業主にペナルティが課されるので注意してください。
次に、従業員を雇ったときの手続きの方法を、おもな3つの提出先にわけて解説します。
①税務署
②労働基準監督署
③ハローワーク
税務署へ届出
従業員を雇って給与を支払う場合、税務署への届出が必要です。
ただし、個人事業主が開業と同時に従業員を雇用する場合は例外です。
個人事業主の開業届に給与等の支払の状況を記載する欄があるので、従業員の情報を開業届に記載していれば、改めて給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書を提出する必要はありません。
また、親族に給与を支払う青色申告者は、青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書の提出が必要になります。
労働基準監督署へ届出
労災保険の加入手続きは労働基準監督署でおこないます。
労災保険とは、従業員が業務上または通勤中の事故によってケガや病気、障害、あるいは死亡となった場合に、従業員や遺族が一定の保険給付を受け取れる制度です。
労災保険は雇用人数や日数、雇用形態にかかわらず、事業主が労働者を1人でも雇用していれば必ず加入しなければなりません。
労働保険関係成立届は雇用から10日以内に、労働保険概算保険料申告書は50日以内に提出しましょう。
ハローワークへ届出
労災保険と雇用保険をあわせて労働保険とよびますが、雇用保険はハローワーク(公共職業安定所)へ届け出ます。
雇用保険とは、失業した場合や育児、介護などで休業して収入が減った場合に、従業員が一定の保険給付を受け取れる制度です。
4つの業種(農林水産業・建設業・港湾労働法適用の港湾運送業・地方自治体がおこなう事業)以外は労災保険と雇用保険をあわせて労働保険として取り扱います。
よって、労働者を1人でも雇えば、雇用保険の手続きもおこなわなければなりません。
なお、従業員の加入要件は後ほど詳しく解説します。
従業員の所得税注意すべき3つのタイミング
個人事業主が従業員の所得税をあつかうタイミングは次の3つです。
①給与計算をするとき
②所得税を納付するとき
③年末調整をするとき
従業員を雇うとほぼ毎月所得税の手続きをするので、うっかり忘れたということがないよう十分に注意してください。
次に3つのタイミングを詳しく確認していきましょう。
給与計算をするとき
従業員の給与を計算する際に、所得税を源泉徴収します。
所得税の計算に必要な資料は、給与所得の源泉徴収税額表です。
従業員の社会保険料等控除後の給与金額と扶養人数に応じて、源泉徴収税額表を参照すれば、所得税額を知ることができます。
ただし、支払方法によって源泉徴収税額表は次の3種類にわかれているので、実態にあわせて使い分けましょう。
①月払いの給与・・・月額表
②日払いや週払いの給与・・・日額表
③賞与の支払・・・賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表
また、税額表には甲欄、乙欄、丙欄があります。
甲欄とは「給与所得者の扶養控除等申告書」の提出がある従業員に適用する税区分で、乙欄は提出がない従業員に対する税区分です。
一方、丙欄とは基本的に日雇い賃金に適用される税区分で、日雇い労働者や短期アルバイトが対象となります。
所得税を納付するとき
従業員から源泉徴収した所得税は、原則給与を支払った月の翌月10日までに納付しなければなりません。
ただし、給与を支給する従業員が常時10人未満の場合には、半年ごとに納付できる特例制度があります。
納付には「所得税徴収高計算書」いわゆる納付書を使って、金融機関や税務署で支払います。
その他にもダイレクト納付やインターネットバンキング納付、クレジットカード納付、スマホアプリ納付が利用できるので、手続きしやすい方法を選択しましょう。
なお、所得税の納付が1日でも遅れてしまうとペナルティとして不納付加算税が課されることがあります。
金額は原則納付すべき所得税の10%ですが、税務署から指摘される前に自主的に納付した場合は5%に減額されます。
年末調整をするとき
従業員を雇って給与を支払うと、12月には年末調整をおこなう必要があります。
給与の支払いごとに所得税を源泉徴収していますが、所得税は本来1年間の所得に課される税金です。
そこで、12月に1年間の給与支給額と控除額を集計し、所得税を計算しなおし確定させる手続きを年末調整といいます。
年末調整には次の4つの申告書を従業員に提出してもらわなければなりません。
①扶養控除等申告書
②基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書
③保険料控除申告書(保険料等の控除がある方のみ)
④住宅借入金等特別控除申告書(住宅借入金等特別控除の適用がある方のみ)
年末調整には専門知識と作業時間が必要ですが、従業員の所得税を正しく計算するために重要な手続きです。
忘れず正確におこないましょう。
従業員を雇ったときの所得税の注意点
従業員を雇ったときに、特に注意すべき所得税のポイントを3つ紹介します。
所得税はミスのないように計算しなければならないため、1つ目と2つ目の注意点が重要になります。
また、事業主の事務負担を減らしたい場合は、3つ目のポイントが役に立ちます。
それぞれ確認していきましょう。
①所得税を正しく計算する
②社会保険適用事業所の要件もチェックしておく
③特例納付を活用する
所得税を正しく計算する
所得税は普段の給与計算のときから正しく計算しましょう。
正しく計算するためのポイントは次の3つです。
①所得税がかからない項目を集計しない
たとえば給与と一緒に支給される一定額までの通勤費は所得税がかからないので、集計しないようにしましょう。
②社会保険料の計算を間違わない
社会保険料控除後の給与額から所得税を計算するため、社会保険料にも注意しなければなりません。
③扶養人数の変動に注意する
扶養人数が変動したときは所得税額がかわります。
たとえば、次のようなケースがあったときは注意しましょう。
・年の途中で結婚し配偶者が扶養に入った場合
・親を扶養に入れた場合
・扶養に入っていた子どもが就職し扶養から外れた場合 など
社会保険適用事業所の要件もチェックしておく
個人事業主が社会保険適用事業所に当てはまるかどうかについてもチェックしておきましょう。
一方、雇用保険については、1人でも従業員を雇っていれば加入しなければなりません。
なお、給与から社会保険料を徴収しなければならない従業員の要件は次のとおりです。
【健康保険・介護保険・厚生年金保険の加入要件】
・常時雇用される正社員
・給与額や労働時間の要件に該当するパート・アルバイト
・健康保険は75歳未満、介護保険は40歳以上65歳未満、厚生年金保険は70歳未満の方
【雇用保険の加入要件】
・1週間の所定労働時間が20時間以上
・31日以上の雇用見込みがある方
特例納付を活用する
所得税の納付期限の特例制度を活用しましょう。
所得税は原則毎月納付が必要なため、時間と手間がかかってしまいます。
そこで、給与支払人数が常時10人未満であれば、源泉所得税の納期の特例を申請することで、納付が半年に1回になります。
提出期限は特に定められていませんが、原則提出した日の翌月に支払う給与等から適用されます。
たとえば、毎月25日が給与支給日の場合、4月1日に申請書を提出したとすると、納期限は次のようになります。
・4月25日支給分の納期限は5月10日
・5月から6月支給分の納期限は7月10日
・7月から12月支給分の納期限は翌年1月20日
【まとめ】従業員を雇ったときの所得税に注意
従業員を雇ったときは所得税の手続きが必要になります。
しかし、年末調整など所得税の計算には専門知識が必要です。
手続きを間違えてしまうと、ペナルティが発生する場合があるので注意しましょう。
「従業員を初めて雇ったが手続きがわからない」
「所得税の納付や年末調整などの事務作業をサポートしてほしい」
従業員の所得税にお困りの個人事業主の方は、ぜひタックスボイスへご相談ください。
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