源泉所得税の納付期限が過ぎた!うっかりミスでもペナルティはある?
従業員の給与から徴収した源泉所得税は、事業者が税務署へ納付しなければなりません。
源泉所得税には納付期限が定められており、納付期限を過ぎるとペナルティが課されることがあります。
この記事でわかること
・源泉所得税の納付期限
・不納付加算税と延滞税
・納付期限が過ぎたときの対処法
源泉所得税の納付期限が過ぎてしまいお困りの方は、ぜひ最後までお読みください。
源泉所得税の納付期限
源泉所得税は納付書を使って、金融機関などで納付した時点で申告も完了します。
つまり、源泉所得税は申告と納付を1つの手続きで同時に済ますことができるのが特徴です。
また、確定申告の申告期限と同じ役割をするのが、源泉所得税の納付期限です。
次に、納付期限と期限を過ぎてしまった場合のペナルティについて解説します。
【原則】給与支払日の翌月10日
源泉所得税の納付期限は、原則給与や報酬を支払った日の翌月10日です。
たとえば、1月25日に従業員へ給与を支払った場合、徴収した源泉所得税は2月10日までに納付しなければなりません。
また、3月25日に従業員へ給与を支払い、3月31日に税理士へ報酬を支払ったときは、給与から徴収した源泉所得税とあわせて税理士報酬の源泉所得税も一緒に、4月10日までに納付する必要があります。
なお、年末調整などで給与の支払いはあるが源泉所得税の納付額は0円だとしても、納付書を税務署に提出しましょう。
源泉所得税は納付書が申告書も兼ねているので、ゼロだからと放置していると無申告になる場合があります。
【特例】半年に1回
給与を支払う従業員が常時10人未満の事業者は「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を税務署に提出すれば、納付期限を年2回に減らすことができます。
この特例制度を受けた事業者は、半年分の源泉所得税を合計して申告し納付します。
申請書の提出期限はなく、原則提出した日の翌月に支払う給与等から適用されます。
うっかりミスでもペナルティあり!
源泉所得税を期限までに納付しなければ、以下のようなペナルティがあります。
・不納付加算税(納付しなかったことによるペナルティ)
・延滞税(納付期限を過ぎた日数に応じて計算されるペナルティ)
これらはうっかり期限を忘れてしまった場合でも適用されることがあるので注意しなければなりません。
ただし、場合によってはペナルティが軽減されたり、そもそも課されなかったりすることがあります。
次に、不納付加算税と延滞税について詳しく解説します。
ペナルティ①不納付加算税
不納付加算税とは、源泉所得税を納付期限までに納付しなかった場合に課される税金です。
源泉所得税の額の10%相当額をペナルティとして納めなければなりません。
ただし、源泉所得税の金額や状況によって、軽減されるケースや免除されるケースもあります。
軽減されるケース
源泉所得税の納付期限が過ぎてしまった場合でも、税務調査で指摘される前に自発的に納付したのであれば、不納付加算税の金額は10%から5%相当額に軽減されます。
つまり、税務署から指摘されるまでに、納付していないことに気がついた時点ですぐ納付すれば不納付加算税は少なくなるということです。
税務署から納付確認の連絡や、税務調査の日時の連絡があった段階では、まだ指摘を受けていないので、速やかに納付すれば軽減されるケースに該当します。
課されないケース
次の要件に当てはまれば、不納付加算税は課されません。
①税務調査で未納付を指摘されたことがないこと
②納付期限から1か月以内に納付されたこと
③原則過去1年間は期限内に納付していたこと
つまり、過去1年間期限内に納付しており、うっかりミスで納付が遅れてしまった場合でも、1か月以内に納付すれば、不納付加算税は原則免除されるということです。
また、やむを得ない正当な理由があると認められれば、不納付加算税が課されないことがあります。
なお、やむを得ない理由とは大規模災害などで、単に知らなかったというような理由は認められません。
不納付加算税の計算方法
不納付加算税の計算式は次のとおりです。
不納付加算税(5,000円未満切り捨て)=源泉所得税の額(1万円未満切り捨て)×10%
つまり、源泉所得税の金額が1万円未満または不納付加算税が5,000円未満の場合は、不納付加算税は発生しません。
たとえば、源泉所得税80,000円の納付が遅れた場合の不納付加算税は8,000円(80,000円×10%)になります。
一方、税務調査で指摘される前に自発的に納付した場合は4,000円(80,000円×5%)となり、不納付加算税は発生しません。
ペナルティ②延滞税
延滞税とは、税金を納付期限までに完納していない場合に課されるペナルティとしての税金です。
納付期限の翌日から納付する日までの日数に応じて延滞税が計算されるので、納付が遅れれば遅れるほど延滞税は大きな金額になってしまいます。
課されないケース
延滞税の計算期間には特例が設けられており、次のような場合には一定期間を延滞税の計算期間に含めないこととされています。
なお、不正行為など悪質な場合には適用されません。
たとえば、源泉所得税の納付期限を過ぎて納付した3年後に税務調査があり、修正があった場合は、当初源泉所得税を納付した日の1年後の翌日から修正申告までは延滞税の計算期間から除外されるので、延滞税は1年間についてのみ課されます。
つまり、延滞税の計算期間は最大1年間になります。
延滞税の計算方法
延滞税の計算方法は、次のとおりです。
なお、延滞税の金額が1,000円未満の場合には切り捨てられ納付義務はありません。
延滞税額=納付すべき本税の金額(1万円未満切り捨て)×延滞税の割合×滞納日数÷365日
つまり、源泉所得税の金額が1万円未満または延滞税が1,000円未満の場合は、延滞税は発生しません。
延滞税の割合についての最新情報は国税庁ホームページで毎年公表されます。
<a href=”https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/entaizei/keisan/entai_wariai.htm”>国税庁 延滞税の割合</a>
令和5年の延滞税の割合は、納付期限日の翌日から2か月を経過する日までの期間は2.4%、2か月を超える期間については8.7%となっています。
たとえば、源泉所得税80,000円を納付期限日の1か月後に納付した場合、延滞税を計算すると100円(80,000円×2.7%×31日÷365日=163円、100円未満切り捨て)となり、納付義務は発生しません。
納付期限が過ぎたときの対処法
源泉所得税の納付期限がうっかりミスで過ぎてしまっても慌てず対処しましょう。
次に対処法を2つ紹介します。
①気づいたらすぐに納付する
②今後のミス防止にダイレクト納付を活用する
気づいたらすぐに納付する
源泉所得税の納付期限が過ぎていることに気づいたら、すぐに納付してください。
納付期限が過ぎると原則ペナルティがありますが、自主的に納付すると軽減されたり、早く気づいて納付すればペナルティが課されなかったりすることがほとんどです。
税務調査で指摘された後ではペナルティが高額になるので「税務署にバレていないから後回しでいいか」と判断せず、気づいたときには速やかに納めましょう。
今後のミス防止にダイレクト納付を活用する
うっかりミスの原因が、金融機関に行けなかったなど時間や場所の問題だった場合は、今後のミス防止にダイレクト納付を活用しましょう。
ダイレクト納付とは、事前に税務署へ届出をしておけば、電子申告をした後に簡単なクリック操作で金融機関に行くことなく、登録した預金口座からダイレクトに税金を支払うことができる制度です。
特に、源泉所得税は毎月納付期限があり、そのたびに金融機関に行く手間がかかります。
納付期限が過ぎないような対策として、ダイレクト納付を検討してみましょう。
【まとめ】うっかりミスでもペナルティに注意
源泉所得税の納付期限は原則毎月、特例で半年ごとに到来します。
うっかりミスで納付期限が過ぎてしまった場合には、ペナルティが課されることがあるので注意しましょう。
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