フリーランスの法人化の目安は?検討すべきタイミングと判断基準
フリーランスから法人化するときには、損をしないベストなタイミングがあります。
しかし、ベストタイミングを知るためには、税法や法人の実務など専門的な知識を使ったシミュレーションが必要です。
この記事でわかること
・フリーランスと法人の違い
・法人化を検討すべきタイミング
いつかは法人化したいと考えているフリーランスの方にも役立つ内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。
【おさらい】フリーランスと法人の違い
法人化したあとに「こんなはずじゃなかった」とならないために、フリーランスと法人の違いをおさらいしましょう。
違いを見れば、フリーランスと法人それぞれのメリットデメリットも見えてきます。
①税金の違い
フリーランスと法人では、利益にかかる税金が違います。
フリーランスいわゆる個人事業主は、所得(利益)に対して所得税が課されます。
所得税は累進課税といって、所得が大きくなればなるほど税率が高くなる税金です。
その税率は、所得に応じて5〜45%の7段階に区分されています。
一方、法人税は所得に対して法人税が課されます。
法人税の税率は一定で、原則23.2%です。
ただし、資本金1億円以下の普通法人など要件を満たす法人において、所得の金額のうち年800万円以下の金額については、15%の税率が適用されます。
このように、所得が少ないうちは個人事業主のほうが税金が少なくなりますが、ある程度事業が大きくなると、法人化するほうが節税になる可能性があります。
また、赤字がでた場合、個人事業主は3年しか繰り越せませんが、青色申告をしている法人は10年繰り越すことが可能です。
(平成30年4月1日前に開始した事業年度において生じた欠損金額の繰越期間は9年です。)
ただし、法人税は所得税よりも規定や要件が複雑で厳密になるので、専門的な知識が必要となります。
②社会保険料の違い
社会保険料についても、フリーランスと法人では大きな違いがあります。
フリーランスが加入できるのは、おもに国民健康保険と国民年金保険です。
これらには、扶養という概念がありません。
よって、配偶者や生計を一にする親族の分も保険料を支払う必要があります。
また、支払った国民健康保険や国民年金保険は事業の経費とすることができません。
一方、法人の役員や従業員が加入できるのは、おもに社会保険(健康保険)と厚生年金保険です。
社会保険には、全国健康保険協会(協会けんぽ)や健康保険組合(組合健保)などがあります。
社会保険と厚生年金保険は、一定の要件を満たす配偶者や親族を扶養に入れることができるので、被扶養者となった人の保険料を別で支払う必要はありません。
また、フリーランスであれば保険料は全額自身で支払わなければなりませんが、法人の社会保険と厚生年金保険は、個人と法人が半分ずつ負担します。
そのうえ法人が負担した保険料は、経費にすることが可能です。
ただし、所得が高額になると、社会保険や厚生年金保険のほうが保険料が割高になる場合があります。
フリーランスの法人化を検討すべきタイミング
フリーランスで事業を続けていくよりも、法人化を検討したほうが良いタイミングがあります。
次に5つのタイミングを解説するので、法人化が有利かどうかを検討してみてください。
①売上が1,000万円を超えるとき
②利益が800万円を超えるとき
③繁忙期や売上のピークが年末から年度末のとき
④将来事業を大きくする構想があるとき
⑤資金調達が必要なとき
①売上が1,000万円を超えるとき
売上が1,000万円を超えたら、法人化を検討するタイミングです。
フリーランスで課税売上(消費税がかかる売上)が1,000万円を超えると、その翌々年には課税事業者となって消費税を納めなければならないからです。
しかし、課税事業者になる前に法人化すると、フリーランスの売上による消費税の納税義務がリセットされます。
個人とは別に法人として改めて売上金額で納税義務を判断するので、法人化することで消費税の負担を最長2年先延ばしにできる効果があります。
②利益が800万円を超えるとき
売上から経費を差し引いた利益(所得)を基準とするなら、800万円が法人化を検討する目安になります。
たとえば、さまざまな控除を考慮せずに計算すると、次のようになります。
・フリーランスの場合
所得税 所得800万円×所得税率23%−控除額63.6万円=120.4万円
・法人化した場合
法人税 所得800万円×法人税率15%(※)=120万円
※法人税の税率は原則23.2%ですが、要件を満たす法人と仮定して、所得の金額のうち年800万円以下の金額について適用される税率15%を使用します。
このように、所得が800万円を超えると法人税の方が安くなります。
加えて、ここから各種控除や経費が発生するため、法人の方がさらに税金は安くなるでしょう。
税金を考慮して法人化するなら、自身の事業に合った正確なシミュレーションが必要です。
③繁忙期や売上のピークが年末から年度末のとき
繁忙期や売上の時期によっては、法人化するほうが良い場合があります。
特に、そのタイミングが年末や年度末のときには、一度法人化を検討してみましょう。
フリーランスにおける所得税の計算期間は、1月1日から12月31日と固定されています。
しかし、法人は決算月を自由に設定することができます。
たとえば、フリーランスで年末に繁忙期がくるのであれば、どれぐらい利益が出るのか年の最後までわかりません。
その結果、想定以上に利益が出たとしても節税対策が間に合わず、税金を多く支払うおそれがあります。
一方、法人化して決算月を繁忙期の前にすれば、最初に1年間の売上見込みが立てやすく、効果的な節税対策が可能です。
④将来事業を大きくする構想があるとき
フリーランスとして事業を続けていくなかで、将来的に事業をもっと大きくする構想があれば、法人化を検討するのがおすすめです。
法人は社会的信用度が高く、取引先との関係構築や販路拡大に有利だからです。
なお、法人の設立には登記が必要であり、決算書などの情報を開示する必要があるため、フリーランスよりもはるかに信用は高くなります。
また、将来事業を後継者に引き継ぐときも、フリーランスでは事業をそのまま渡すことができません。
一方、法人であれば経営者を交代するだけで、組織としては存続します。
将来の事業拡大と承継をスムーズに進めるためには、法人化は欠かせないステップです。
⑤資金調達が必要なとき
資金調達が必要なときも、法人化を検討するタイミングです。
法人の高い社会的信用があれば、フリーランスよりも融資を受けやすくなるからです。
また、株式会社であれば、株式を発行して出資を募れます。
対して、フリーランスは個人としての信用になるので、融資はもちろんクレジットカードの審査も通りにくい場合があります。
事務所や店舗を借りるときや、仕入資金や設備投資など、まとまった資金が必要なときは、早めに法人化を検討しましょう。
ただし、法人化したからといって、必ず融資が受けられるわけではありません。
融資を受けるためには、事業計画などの正確な書類が必要です。
書類作成に不安があるときは専門家に相談しましょう。
【まとめ】法人化はベストなタイミングで実行!
フリーランスから法人化するときは、税金や事業内容を考慮してベストなタイミングで実行しましょう。
しかし、タイミングを見極められず逃してしまうと、損をする可能性があります。
「法人化をすべきか検討したいがやり方がわからない」
「法人化について専門家のアドバイスがほしい」
このようなことでお悩みなら、タックスボイスへぜひご相談ください。
タックスボイスは法人化の経験豊富な税理士と提携しており、無料で紹介しています。
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