法人成り後に個人事業主を廃業しないメリットはあるのか?

法人成り後は個人事業主を廃業するのが一般的ですが、必ず廃業しなければならないというわけではありません。

場合によっては、個人事業主を継続するほうが有利なことがあります。

法人成りを検討中の個人事業主の方にとって、個人事業主を廃業しないメリットがあるのかどうかは気になるポイントではないでしょうか。

〜この記事でわかること〜
・法人成り後に個人事業主を廃業しないメリット
・法人成り後に個人事業主を廃業しないデメリット
・個人事業主を廃業しないときの注意点

法人成りによる個人事業主の廃業を検討中の方は、廃業前にぜひ最後までご覧ください。

目次

法人成り後に個人事業主を廃業しないメリット

一般的に法人成りをしたあとは、個人事業主を廃業します。

廃業するには廃業届や青色申告の取りやめ届出書などを税務署に提出するので、個人事業主に認められた税制の特典を、すべて手放してしまいます。

しかし、次のようなケースは個人事業主のまま廃業しないほうが有利です。

・個人事業で別の事業を継続しているケース
・法人成りした新設法人に土地や建物を貸して賃料収入を得るケース
・事業所得や不動産所得が赤字になるケース

これらの廃業しないメリットを詳しく見ていきましょう。

事業所得の青色申告特別控除が受けられる

個人事業主として事業を継続する場合、廃業しないほうが青色申告特別控除を続けて受けることができます。

たとえば、飲食店と小売業をしていた個人事業主が、飲食店だけを法人成りしたとします。

すると、小売業はまだ個人事業として残っているので、小売業の所得は個人で確定申告しなければなりません。

しかし、法人成りのタイミングで個人事業主を廃業してしまうと、小売業の確定申告に青色申告特別控除を使えなくなってしまいます。

よって、個人事業の一部を法人成りした場合は、個人事業主を廃業せずに、個人事業部分は今までどおり確定申告をおこないましょう。

不動産所得が発生しても有利に申告できる

事業所得がなくなっても不動産所得が発生するなら、個人事業主を廃業しないほうが有利です。

たとえば、自宅の一部を店舗として飲食店をおこなっていた個人事業主が法人成りした場合、店舗部分を法人に貸せば、個人は法人から賃料を受け取ることができます。

すると、個人の事業所得はなくなりますが、不動産所得が発生します。

不動産所得も青色申告特別控除など税制上のメリットを受けられるので、個人事業主を廃業せず所得の種類を変えて申告しましょう。

ただし、事業所得と不動産所得では、収支の計算方法や提出する決算書が異なります。

申告を間違えるとペナルティの対象になるので、専門家に相談することをおすすめします。

損益通算で税金が減らせる

事業所得や不動産所得で赤字がでた場合、損益通算で税金を減らすことができます。

損益通算とは、事業所得、不動産所得、譲渡所得、山林所得の4つの所得から発生した赤字を、定められた方法で他の所得と相殺することができる制度です。

たとえば、飲食店と小売業をしていた個人事業主が飲食店だけを法人成りし、自身は法人の役員として給与300万円を受け取りながら、個人で小売業を続けていたとします。

事業が200万円の赤字になった場合、2つの所得を確定申告することで、相殺した100万円から税金を計算することができます。

よって、事業所得や不動産所得が発生するなら損益通算も考慮して、個人事業主を継続しておきましょう。

法人成り後に個人事業主を廃業しないデメリット

法人成り後に個人事業主を廃業せず、継続したほうが有利な場合でも、次のような課題に直面する可能性があります。

・税金の負担が増える
・経理や決算申告の手間が増える
・融資を断られるリスクがある

次に、これらのデメリットを詳しく解説します。

デメリットの対処法もあわせて紹介するので参考にしてください。

ただし、実際に実行する場合は、デメリットを最小限に抑えるために、全体の税金シミュレーションをするなど現状を多角的に分析する必要があります。

税務の対策は専門家である税理士にサポートしてもらいましょう。

税金の負担が増える

法人成りすれば、法人分の税金負担が増えてしまいます。

たとえば、個人事業主の所得が赤字である場合、所得税も住民税もかかりません。

一方、法人が赤字となった場合は法人税はかかりませんが、法人住民税の均等割額を納付する必要があります。

法人住民税の均等割額とは、都道府県と市区町村に納める税金で、資本金の金額と従業員の数によって税額が決まります。

このように、法人住民税の均等割額は逃れられないので、納税資金を準備しつつ、個人事業の税金とあわせた税額のシミュレーションをしましょう。

経理や決算申告の手間が増える

個人事業主を廃業しなければ、個人と法人両方の経理や決算申告が必要になるので、手間が増えます。

また、個人と法人の経理は区別して管理しなければなりません。

たとえば、個人の経費が法人に混ざってしまったり、法人が個人事業の支払いを立て替えたりするなど、個人と法人の線引きが正しくできていない場合、税務調査でペナルティを受ける可能性が高くなります。

経理や決算申告は手間だけでなく正確さも必要になるので、記帳代行や税理士にサポートしてもらうと安心です。

融資を断られるリスクがある

個人と法人に事業をわけた場合、融資で不利になるリスクがあります。

融資の審査では、個人と法人は別事業とみなされます。

よって、個人事業の一部を法人成りした結果、個人も法人も売上が少なくなると、融資を断られる可能性が高くなってしまうのです。

また、個人事業主を廃業していないのは、単なる節税目的ではないかと疑われることもあります。

融資を申し込む際には、通常の事業計画策定に加えて、法人成りした理由や趣旨をしっかりと説明し、節税目的ではなく事業展開であることを伝えましょう。

個人事業主を廃業しないときの注意点

個人事業主を廃業しないときに、注意すべき点を3つ紹介します。

特に、3つ目に当てはまれば複雑な手続きが必要になるので、必ず確認しておきましょう。

①法人と個人が同じ事業をおこなってはならない
②許認可が必要な業種は法人での申請が必要
③利益相反取引に注意する

法人と個人が同じ事業をおこなってはならない

法人成りした新設法人と継続する個人事業主では、同じ事業をおこなってはいけません。

たとえば、個人と法人の関係性については、裁判でも厳しい判決がされています。

大阪地裁平成30年4月19日判決では、個人事業主が自身の設立した法人でおこなった業務に対して、個人から法人へ形式的に外注費の支払いがあったとしても、実態は個人事業主への労働の対価であるとし、そもそも個人事業主の必要経費に該当しないと判断しています。

国税庁 平成30年判決分順号13144大阪地裁所得税更正処分等取消請求事件

他にも、売上の付け替えなどが容易で、税務署から利益操作を疑われてしまうので、同じ事業をおこなうことは避けましょう。

許認可が必要な業種は法人での申請が必要

多くの許認可は法人へ引き継がれないので、あらためて法人で申請する必要があります。

たとえば、飲食店の営業許可、酒類販売に関する許可、古物商許可などは個人から法人へ引き継ぐことはできません。

なお、建設業の許可については、法人成りであっても許可を承継する制度があります。

また、個人と法人では許認可の要件が異なる場合があることに注意しましょう。

個人事業主を廃業せず法人成りした場合の許認可については、必ず申請先に確認してください。

利益相反取引に注意する

利益相反取引に注意しましょう。

利益相反取引とは、法人とその役員の間で、一方は利益になるものの、一方では不利益になる行為のことです。

利益相反取引を会社法は規制しており、次のような手続きが必要になります。

【取締役会設置会社】
・取締役会に重要事実の開示
・取締役会の承認
・取締役会へ事後の報告

【取締役会非設置会社】
・株主総会に重要事実の開示
・株主総会の承認

利益相反取引を自分で判断するのは簡単ではないので、事前に専門家である税理士に相談することをおすすめします。

【まとめ】明確な理由なく廃業しないのはリスク大

法人成りをしたあとも個人事業主を廃業しないことは可能ですが、メリットがあるのは個人事業主を継続する明確な理由があるときです。

手続き忘れなどで個人事業主を放置していると、脱税を疑われるリスクがあります。

個人事業主を継続するほうがメリットがあるかどうかは、必ず検討しましょう。

「法人成りしたが、自宅兼事務所の賃料を法人からとってもいいか」
「法人と個人の税金を総合的に分析してほしい」

法人成りを検討中の個人事業主の方は、ぜひタックスボイスへご相談ください。

タックスボイスはご要望にあった税理士を無料で紹介するサービスです。

法人成りは税理士のサポートがあれば安心です。ぜひご相談ください。

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この記事を書いた人

株式会社トライパートナーズ 代表取締役 山崎友也

当サイト「タックスボイス」運営者です。

相談実績1,000件以上。

税理士紹介のコーディネーターをしています。
日々電車に揺られ西に東に奔走しています。

税理士さんについて知らない社長さまも多く、考え方のギャップを
埋めたい!と思いブログサイトを立ち上げました。

IT、建設業、美容室、飲食店、eBay、せどり、不動産業、エンジニアなど。

様々な業種の方に税理士を無料紹介しています。

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