法人成りの資本金はいくらにすべき?金額の決め方と手続きのすべて
個人事業主の方が法人成りするうえで、資本金の金額をいくらにすべきかは悩むポイントです。
資本金は自由に決めることができるゆえに、いくらにすればいいのかわからなくなります。
また金額によっては、損をしてしまう場合があります。
この記事でわかること
・法人成りにおける資本金の金額の決め方
・資本金の払い込み手続きの方法
資本金の決め方で後悔したくない方は、ぜひ最後までお読みください。
法人成りの資本金はいくら?金額の決め方
個人事業主が新たに会社を設立して、事業と資産を引き継ぐことを法人成りといいます。
会社設立時には、資本金の準備が必要で、法人成りでも同様です。
資本金の金額に下限はなく、1円でも株式会社を設立できます。
また、会社の業務すべてに資本金を利用することができ、返す必要はありません。
さらに、資本金は会社の社会的信用度をあらわす指標であり、一般的に資本金が多いほど会社の信用力も高く評価される傾向にあります。
よって、資本金の金額は経営に影響を与える場合があることを理解して、よく検討しなければなりません。
次に資本金の金額の決め方として、以下の5つを紹介します。
①設備資金と最低3ヶ月の運転資金
②消費税を節税するなら1000万円未満
③住民税を節税するなら1000万円以下
④取引先の信用が獲得できる金額
⑤許認可が必要な業種は要件の金額
①設備資金と最低3ヶ月の運転資金
資本金は返す必要がなく、法人のために自由に使えるお金です。
特に、会社設立時に準備する資本金は、おもに設立当初の設備資金と運転資金になります。
法人成りであれば、個人事業主から資産を買い取る資金が必要です。
さらに、新たに設備投資をするなら、その設備資金を準備しなければなりません。
また、法人成りしたからといって、業績が急激に悪くなることは考えにくいですが、組織形態の変化に慣れるまで業績の見通しが立てにくい可能性があります。
そのことを考慮して、最低3ヶ月分の運転資金は確保しておきましょう。
ただし、売上債権の回収にもっと長い期間を必要とするのであれば、その回収時期に合わせて運転資金を準備するようにしてください。
②消費税を節税するなら1000万円未満
消費税を節税するなら、資本金は1000万円未満に設定する必要があります。
消費税において、基準期間の課税売上高が1000万円以下の事業者は消費税の納税が免除されます。
新たに設立された会社については、設立1期目2期目は基準期間がないので、最初の2期は原則消費税を納税する必要がありません。
しかし、事業年度開始の日における資本金が1000万円以上の場合、納税義務が免除されません。
そのため、設立時に1000万円以上の資本金を設定してしまうと、設立した最初の年から消費税が課税され、本来納めなくても良いという免税制度を活用できなくなってしまいます。
なお、資本金が1000万円未満でも、売上高や給与等支払額によっては節税できない場合があります。
③住民税を節税するなら1000万円以下
法人住民税の均等割を節税するなら、資本金は1000万円以下に設定する必要があります。
法人住民税とは、都道府県及び市町村に事務所などを有する法人が支払う税金で、均等割と法人税割の2種類があります。
このうち、資本金の金額が関係するのは、均等割です。
均等割とは、赤字黒字に関係なく、その地域に事務所等があれば課される税金です。
都道府県民税では法人の資本金等の額を、市町村民税では法人の資本金等の額と従業者数を基準に税額が定められています。
たとえば、大阪府の税率表をみてみましょう。
大阪府 法人府民税・法人事業税・特別法人事業税・地方法人特別税の税率一覧
大阪府に事務所がある法人で資本金が1000万円以下の場合、均等割は2万円になります。
一方、資本金が1000万円を超え1億円以下の場合には、均等割は7.5万円となり、金額は3倍以上です。
④取引先の信用が獲得できる金額
資本金は会社の信用力をはかる指標でもあります。
一般的に資本金が多いほうが、社会的信用度が高いといえるでしょう。
取引先によっては、ある程度の資本金がある会社としか取引しないと決めている場合もあります。
特に、BtoBビジネスは法人の状況を必ず確認します。
取引中に相手が資金不足となって、代金がもらえないなどといった問題が起きては困るからです。
法人成りは個人事業主よりも取引先を獲得しやすいというメリットがありますが、取引が BtoBメインの場合は資本金の金額に注意しましょう。
対して、BtoCビジネスなど個人との取引が多い場合は、資本金の金額が問題になることはあまりありません。
⑤許認可が必要な業種は要件の金額
資本金は1円でも法人を設立できますが、許認可が必要な業種では、資本金の金額に要件が定められていることがあります。
たとえば、次のような業種は資本金の金額が要件を満たしていないと、許認可をとることができないので、注意しなければいけません。
・利用運送業 300万円以上
・建設業(一般) 500万円以上
・建設業(特定) 2000万円以上
・有料職業紹介業 500万円以上
・人材派遣業 1000万円以上
・一般労働者派遣業 2000万円以上
・旅行業(第1種) 3000万円以上
・旅行業(第2種) 700万円以上
・旅行業(第3種) 300万円以上
・旅行業(地域限定) 100万円以上
法人成りをする前に、ご自身の業種の資本金について担当する行政機関に必ず確認してください。
法人成りの資本金払込み手続き
法人成りする際には、資本金を払い込む手続きをおこないます。
次の5ステップで手続きするので、確認しておきましょう。
①発起人個人の銀行口座を準備する
②資本金を振り込む
③払い込み内容の明細コピーを作成する
④払込証明書を作成する
⑤明細コピーと払込証明書を綴じる
①発起人個人の銀行口座を準備する
資本金手続きの最初のステップは、発起人個人の銀行口座を準備することです。
資本金を払い込む時点では、まだ会社は設立されていないので、会社の銀行口座は作成できません。
そのため、法人成りであれば個人事業主の方の銀行口座を用意します。
なお、新しい口座ではなく、発起人が使用している口座で問題ありません。
②資本金を振り込む
次に資本金を発起人の銀行口座に振り込みます。
誰がいくら出資したかを明らかにするために、振り込む必要があります。
法人成りで個人事業主の方が全額出資する場合は、別口座から振り込むか、一旦資本金の額を引き出したあと、再度同じ口座に入金するという方法で、資本金の金額を証明することが可能です。
③払い込み内容の明細コピーを作成する
資本金が振り込まれたら、払い込み内容を証明する明細コピーを作成します。
通帳であれば、表紙・表紙裏・振込内容が記載されたページをコピーします。
インターネットバンキングであれば、銀行名・支店名・預金種別・口座番号・口座名義人の氏名・振込内容が記載されている箇所をプリントアウトしたものが必要です。
④払込証明書を作成する
払込証明書を作成し、次の7つの項目を記載します。
・払込があった金額の総額
・払込があった株数
・1株の払込金額
・日付
・本店所在地
・会社名
・代表取締役氏名
なお、日付に入るのは資本金が払い込まれた最も遅い日以降の日付です。
また、会社代表印を払込証明書の左上と代表取締役氏名の右側の2か所に押します。
⑤明細コピーと払込証明書を綴じる
最後に、払い込み明細コピーと払込明細書を綴じます。
払込証明書を1番上にして、③で準備した払い込み内容の明細コピーを後ろにつけてホッチキスで製本します。
次に、各ページの境目に代表者印を押印して完成です。
会社登記の際に必要な書類なので、抜け漏れがないよう注意して作成しましょう。
【まとめ】法人成りの資本金決めは重要ポイント
法人成りにおいて資本金の決め方は、経営上でも税務上でも重要なポイントです。
ご自身の事業に合った資本金の金額にしなければ、取引先が減ったり、税金を払いすぎたりするおそれがあります。
また、資本金払い込み手続きは確実に理解したうえで、処理しなければなりません。
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