「現金主義」と「発生主義」混在はNG?それぞれの経理処理の仕方
確定申告に必要な記帳入力にあたり、「現金主義」と「発生主義」どちらにすべきか、あるいは混合しても良いものか、疑問に思いますよね。
事業主や税理士に相談をすると、「混合したらダメ」というひともいれば「混合しても問題ない」という人もいます。
このように答え自体も混合しており、結局どちらの意見を信じれば良いのかわからなくなっている事業主さんからのご相談は珍しくありません。
▼この記事でわかること
・現金主義と発生主義の特徴
・現金主義と発生主義どっちを選ぶべき?
・現金主義と発生主義は混合しても大丈夫?
・自分で記帳が難しいときの対処法
結論からお伝えすると、「現金主義」と「発生主義」の混合事態がダメなわけではありません。
しかし、原則は「発生主義」が良いとされており、悩むのであれば発生主義に統一をしておけば良いです。
もし現在すでに混合で記帳して申告済みの場合なら、結果的に所得金額や税額に変更がなければ修正申告は必要ありません。
なぜなら大切なのは、現金主義と発生主義どちらを活用するのかではなく、間違いのない申告をすることだからです。
なお、すでに「現金主義」と「発生主義」を混合している人や、「発生主義に統一して経理周りを整頓したいけど難しい」という人は、税理士に任せればすぐに解決します。
この記事では、「現金主義」や「発生主義」の特徴や、混合してはいけないと言われる理由、それぞれの経理処理の方法を詳しくご紹介します。
「現金主義」と「発生主義」は混合してもOK?
記帳をするにあたり、「現金主義」と「発生主義」どちらにすべきなのか、混合しても良いものなのかが問われることが多いです。
「現金主義」とは一般的に「簡易的な方法」と呼ばれています。
一方で「発生主義」は「原則利用すべき方法」です。
つまり、原則的には「発生主義」に統一し、混合すべきではない、というのが模範的な回答になります。
ではまず、「現金主義」と「発生主義」の特徴からおさえていきましょう。
「現金主義」とは?
「現金主義」とは、現金の移動があった時点で会計処理をおこなうことです。
現金の受け取りや支払いがあった時点を基準に認識し、記帳するため手間は少ないですが、損益計算が成り立たないため経営判断をするには向いていません。
▼現金主義の特徴
・取引を記載する手間が少ない
・商品を購入した日と支払日が異なる
・前払いや未払いのある取引に不向き
・損益計算が成り立たない
【現金主義】メリット・デメリット
現金主義のメリットは、確実性が高いことです。
現金が動いた時点で記帳をするものなので、取引をした時点では記帳する必要がありません。
取引発生ベースではなく、現実的な現金の動きベースで記帳をするぶん、現状の事実だけを記帳するため、不正しにくいという特徴があります。
一方で現金主義のデメリットは、現金以外の取引が行われるときの対応に不向きな点です。
その時点での資産状況しか把握できないため、総合的な損益を見通すことが難しくなります。
「現金主義」はあくまで簡易的な記帳をしたいときに適用できるものであり、経営を続けていく気のある事業主ほど「発生主義」を選ぶべきでしょう。
「発生主義」とは?
「発生主義」とは、企業会計の原則として求められている会計処理の方法です。
お金の受け取りや支払いなどの取引が発生した時点で計上するため、現物としての金銭のやり取りがない時点でも損益計算ができます。
ただし、収益は実現するまで計上してはいけないとされているため、厳密にいうと「費用は発生主義」「収益は実現主義」での対応が、事業によっては必要になることもあります。
(実現主義とは、代金や物品によって収益があがることが確定した時点で、収益を計上する方法です。)
▼発生主義の特徴
・掛取引や減価償却が計上できる
・現金のやり取りがなくても記帳できる
・財務状況を正確に把握可能
・発生した時点と支払った時点どちらも記帳する
【発生主義】メリット・デメリット
発生主義にも、メリットとデメリットがあります。
発生主義のメリットは主に、売上諸掛や仕入諸掛、減価償却などの記帳に対応できることです。
発生した時点に加えて支払った時点も記帳する特徴により、資金の流れ全体を把握することができます。
現実的にはまだ現金の取引がおこなわれていない状態でも、総合的にみてどれだけの収益・損失があるのかを把握しやすい点が主なメリットです。
一方でデメリットは、勘定科目が複雑になり、帳簿にミスをした場合の修正が面倒なことです。
また、発生した時点と支払い時点で記帳をするなど、記帳忘れが発生してしまいやすい傾向もあります。
「現金主義」と「発生主義」の違いとは?
事業主にとって「現金主義」と「発生主義」の主な違いは、経営判断の正確性です。
現金主義では現時点での資産状態しかわからないことに対し、発生主義では取引全体の見通しをもとに資産状態を判断できます。
たとえば、下記のような取引があった場合の、「現金主義」と「発生主義」の計上方法を比較してみます。
12月に…
・5万円の代金を支払い商品を入荷
・入荷した商品を9万円に設定して販売(代金は1月に回収)
上記の場合、「現金主義」と「発生主義」では、12月末の損益計算時には下記のように記帳します。
・現金主義:5万円の赤字があった(12月時点の支出分)
・発生主義:4万円の黒字があった(12月の売上9万円から支出分5万円をマイナス)
このように、発生主義にした方が経営判断がしやすくなるため、多くの税理士が発生主義での記帳をおすすめしています。
「現金主義」と「発生主義」は混合すべきではない!理由とは?
混合すべきではない主な理由は、取引の二重計上をしてしまう危険性があることに加え、現金主義も並行して扱うにおいて未決済勘定の確認が必要になり手間が増えるからです。
特に問題になるのが、両者を混合したことによるミス計上です。
二重に計上して事業主が損をしているのなら問題ないですが、事業主が得をしていることが税務署にバレてしまった場合には、追徴税の対象になります。
とはいえ実際には「現金主義」や「発生主義」を混合させて計上すべき事業もあるため、判断は税理士にまかせるのが安心です。
【まとめ】「現金主義」と「発生主義」は混合しても問題はない
結論、「現金主義」と「発生主義」は混合しても問題はありません。
しかし、混合することによってミスが発生してしまいやすいため、一般的には「発生主義で統一すべき」と言われています。
また、現金主義と発生主義を混合することにより手間が増えてしまうため、どうしても発生主義に統一できないのであれば現金主義に統一してしまうのも手でしょう。
とはいえ、原則としては発生主義にすべきです。
万が一税務署におとがめがあった場合、経理がずさんな状態であることが見つかってしまえば、今後の信頼もなくなります。
もし計上ミスが見つかった場合には重い追徴税の対象となることもあるため、日頃から慎重に経理を扱うべきです。
自分で記帳をするのが難しいなら税理士に丸投げし、任せてしまっても良いのではないでしょうか。
「発生主義の方が良いのはわかるけど、自分にはできない…」
「すでに経理がぐちゃぐちゃで、何から手をつければ良いかわからない…」
「節税対策をしているつもりだけど、損がないか確認したい…」
このような人は、タックスボイスにご相談ください。
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